荒川区の高台、日暮里の台地を歩く

武蔵野台地の東端、上野台地と呼ばれる台地の南西部をめぐります。

旅のしおり

1

JR日暮里駅

旅のはじまりを
かわいい猫が見送ってくれます

JR日暮里駅の北改札口を出て、西口へ。
さあ、でかけましょう。谷中銀座商店街に向かって歩き出します。

でも、待って! 出たら、振り返ってみてください。
「日暮里駅」という表示、なんだか可愛く見えませんか。
よく見ると、耳や足があって、「駅」の字の最後の一画はしっぽになっています。
猫の多い谷根千エリアにちなんで、デザインされたそうです。日暮里駅でも、この駅名表示はここだけ。
楽しい気分で歩き出します。

02

夕やけだんだん

階段から見る美しい夕焼けと
なつかしい気持ちにさせてくれる風景

日暮里駅を出て、ゆるやかに上る坂「御殿坂」を歩いて行くと、目線の先に大きな看板が見えます。
「ひぐらしの里 谷中ぎんざ」
いつも買い物客でにぎわう谷中銀座商店街です。

商店街に通じる階段は「夕やけだんだん」と呼ばれています。
一般公募で付けられたその名前のとおり、階段からは美しい夕焼けを眺めることができます。
夕焼けと、階段下の商店街へと続く景色は、なつかしい気持ちにさせてくれると人気です。

荒川区西日暮里3丁目13番付近
JR日暮里駅 徒歩約5分

03

日暮里延命院貝塚

縄文時代後期の貝塚

夕やけだんだんを下りて間もなく、説明板が設置されています。
「日暮里延命院貝塚(にっぽり えんめいいん かいづか)」
今から3,500年前、この付近に、縄文時代後期の貝塚が存在していたことを伝えています。

貝塚が知られるようになったのは、明治21年。延命院の崖下の土取り工事で貝塚が掘り出され、土器片が含まれていることを偶然発見したと書かれています。
縄文時代の荒川区は大部分が低地で、浅い海が広がっていたといいます。台地の上で古くから人が生活していたことを知り、夕やけだんだんを見上げてみると、また違った表情が見えてくるのではないでしょうか。

延命院

荒川区西日暮里3-10-1

四代将軍徳川家綱の乳母三沢局を開基とする日蓮宗の寺院。
家綱の安産祈願をした日長が甲州身延山の七面大明神を勧請し、慶安4年(1651)にその別当として開創。境内には、樹齢600年を越える東京都指定天然記念物の大椎がある。

04

諏訪台通り

商店街を後にし、来た道を戻ります。
夕やけだんだんを上り、諏訪台通りを西日暮里駅方面へ進みます。
啓運寺、養福寺、浄光寺などが通り沿いに並んでいます。

05

富士見坂

かつての眺望に思いをはせる

富士見坂は、都心にいくつかある「富士見坂」の中でも、地上から富士山の形がよく見える坂として知られてきました。
平成16年には、国土交通省関東地方整備局「関東の富士見百景」に選定。
冬期には「ダイヤモンド富士」を目当てに訪れる人も数多くいました。
ただ残念ながら、平成25年頃に建物によってその姿は見えなくなってしまいました。

坂の下の北側にある墓地は、かつて「花見寺」と称された日蓮宗妙隆寺の跡地です。
そのため坂は「花見坂」、または「妙隆寺坂」とも称されていました。

荒川区西日暮里3丁目7番付近

06

諏訪台

景勝の地として知られた場所

諏方神社の境内、更に敷地の奥へと進むと、高台ならではの眺望が望めます。
広がる空とビル群、眼下にはJRの線路があり、電車が走っています。まさに「台地」にいることを実感させてくれます。

江戸時代、四季折々の景色を楽しむ客でおおいに賑わった諏訪台。
広重の『名所江戸百景』の中にも春の景色が描かれています。
この一帯は当時、「新堀(にっぽり)」でしたが、日が暮れるまでいても飽きない「日ぐらしの里」と呼ばれたことから、「日暮里」となったといわれているそうです。

諏方神社(すわじんじゃ)

荒川区西日暮里3-4-8

元久2(1205)年創建の歴史を誇る神社。
諏訪大社(長野県諏訪市~諏訪郡)の分社で、御祭神は同じく建御名方命(たけみなかたのみこと)。
江戸時代には、日暮里新堀・谷中の総鎮守として広く信仰を集めた。

07

西日暮里公園

電車好きにはたまらない、絶好のスポット。
西日暮里公園からは、JR西日暮里駅のホームや線路を眺めることができます。
立ち並ぶ樹木の中を、ゆっくり歩いてみてください。

西日暮里3-5-5

08

道灌山

虫聞きの名所

西日暮里公園を抜けた先、道灌山通りに架かる歩道橋を渡ったその先に見えるのは開成学園です。
道を渡った先は、西日暮里4丁目。西日暮里4丁目の台地は「道灌山」と呼ばれています。
道灌山は眺望がよく、秋田藩主の抱屋敷や見晴台があったといいます。
見晴台は庶民にも開放され、茶屋があり、三河島や尾久の田園風景、筑波山や日光連山、下総国府台(千葉県市川市)などを望むことができたようです。
江戸時代には薬草が豊富に採れ、また、虫の声を聴く名所としても名高い場所でした。
秋の風情を求めて江戸の人々が集まったそうです。

09

道灌山遺跡

脈々と続く人々の暮らしの跡

開成学園の第2グラウンドを中心に広がるのが「道灌山遺跡」です。
道灌山遺跡は、縄文時代から江戸時代にかけての複合遺跡。
これまでの発掘調査で、縄文時代前期・弥生時代中期・平安時代の住居跡や江戸時代の溝(環濠)などが確認されています。
遺跡自体を見ることはできませんが、はるか縄文の時代から人々が暮らし、また景勝地であり名所であったことを思い、台地を散策すると味わい深いものがあるのではないでしょうか。

荒川区西日暮里4丁目2番付近

10

図書館で本を借りる

もっと足をのばして

荒川ふるさと文化館

荒川ふるさと文化館は、古代から現代に至る荒川区の歴史・民俗資料を展示した施設です。
今回ご紹介した、日暮里延命院貝塚の地層の断面が展示されています。
「プロローグ・あらかわの原始ゾーン」では、日暮里延命院貝塚と道灌山遺跡、そして低地で確認された古墳時代の町屋四丁目実揚(みあがり)遺跡などから出土した遺物が展示されています。当時の人々がどんな暮らしをしていたのかを知ることができます。

荒川区南千住6-63-1(荒川区立南千住図書館との併設)
03-3807-9234
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、毎月第2木曜(館内整理日)、年末年始
開館時間:午前9時から午後5時まで(展示室への入館は午後4時30分まで)
入館料:100円※

※荒川区民で中学生以下および65歳以上の方、障がい者及びその介助者は、証明書等の提示で免除