おすすめの本

愛をかたる

  • 掲載日:2019年2月15日

2月のメインイベントの1つ、バレンタイン。一喜一憂した方もいたのでは?
近年はチョコレートの祭典のような様相もありますが、本来は愛を誓うもの。愛をかたるなんて、気恥ずかしいけれど、せっかくの機会です。「愛」について考えを深めてみませんか。愛をテーマに3冊の本をご紹介します。

I Love Youの訳し方

I Love Youの訳し方

  • 望月竜馬/著
  • 雷鳥社
  • 2016年12月

「I Love You」の名訳といえば、思い浮かぶのが漱石の「月が綺麗ですね」。
本当に訳したかどうか諸説ありますが、「I Love You」の心情はいかようにも訳せるという、素晴らしい見本であることは間違いありません。
この本には、100人の作家の「I Love You」が紹介されています。訳し方というより、著者がこれは「I Love You」であると感じ取った作品中の一文です。時代も国も年齢も様々な作家たちの表現は、その一文を切り取られることによって、更に力強く胸に迫ります。
「I Love You」あなたなら、どんな風に訳しますか?

愛の顚末-純愛とスキャンダルの文学史

愛の顚末-純愛とスキャンダルの文学史

  • 梯久美子/著
  • 文藝春秋
  • 2015年11月

明治から昭和にかけての作家、12人の、愛の模様を浮き彫りにしたノンフィクション。今よりも死が身近にあった時代、どの作家も短い人生を愛に、執筆に、懸命に生き抜いた様子に胸を打たれます。
様々な愛の様子が描かれていますが、特に印象深いのは女性に対する尋常でない執着を描いて「痴情作家」と呼ばれた近松秋江。その代表作はすべて自身の体験を書いた私小説なんだそうです。別れた妻が若い男と一緒に住んでいると知れば追いかけ、その後に入れ込んだ京都の芸妓が姿を消せばまた追いかけ。今ならストーカーと呼ばれるような執着っぷりを小説に残してます。
他に、病床で愛を育んだ三浦綾子。最愛の妻と死別したことで死に向かっていった原民喜。宇野千代をめぐって梶井基次郎と決闘したと言われている尾崎士郎。家庭教師をした少女を好きになり、結婚できなければ死のうとまで思いつめた八木重吉など…。
多くの作家が自身の愛について小説、詩や歌を書き残しています。「愛の顛末」を読んだ後で12人の作家の作品を読み、またここに戻って来る。いく度も読み返したくなるようなそんな一冊です。

ペイネ・愛の本

ペイネ・愛の本

  • レイモン・ペイネ/著
  • みすず書房
  • 1974年6月

仲睦まじい男の子と女の子、異国情緒あふれる背景、一度はどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。フランスのイラストレーター、レイモン・ペイネの作品、「恋人たちシリーズ」です。ペイネは1908年にフランス・パリに生まれ、昨年生誕110年を迎えました。「恋人たちシリーズ」は1942年、ペイネ35歳の時に雑誌で連載が開始されました。
ペイネの作品はユーモアにあふれ、1点1点に添えられた恋人たちの台詞にもほっこりさせられますが、時に戦後の社会に向けて鋭い風刺を含むと言われます。平和を愛したペイネならではの気持ちがイラストに込められているようです。
何年たっても色あせないペイネ作品、大切な人と一緒にのんびりとイラストを眺める、そんな冬の一日はいかがですか?