おすすめの本

気になる生きもの

  • 掲載日:2019年3月15日

都電から真っ白なモクレンの花をみかけました。鳥のさえずりも聞こえてきて、飛んでほしくない花粉もめいっぱい飛んでいて、すっかり春です。
生きものたちの活動が盛んになってきました。
よく見かける生きもの、ありふれているけど意識することのない生きもの、ほとんど知らなかった生きもの。情熱あふれる紹介で、気になる生きものが増えてしまう、そんな本を紹介します。

鳥類学者の目のツケドコロ

鳥類学者の目のツケドコロ

  • 松原始/著
  • ベレ出版
  • 2018年7月

最初に「カラスしか見ない!わけではない」と書かれていますが、15項のうち4項がカラスについてです。著者は『カラスの教科書』の松原始。最初がハシブトガラスで、次がハシボソガラス。それぞれナワバリや採餌行動について少し専門的な説明も入るのですが、わかりやすく読みやすい文章です。
カラスの他、スズメ、ツバメ、サギ、セキレイ、ヒヨドリなど、身近な鳥たちの暮らしぶりや振る舞いについて語るなかで、どのように鳥の研究をしているかについても教えてくれます。
少しながいですが、本書で最も印象深かった箇所をカワセミの項から引用します:「漠然と「川をきれいに」したところで、カワセミは戻ってなんかきません。その川の餌状況はどうなのか。カワセミが飛び込めるほどの水深はあるのか。適当な止まり場所はあるか。営巣はできるか。(中略)きちんとした調査や裏付けが必要です。鳥や魚の生活史、地域の生態系への理解も当然、必要です。」鳥類学者の目のツケドコロを知ることで、鳥に対する見方もかわります。

ときめくコケ図鑑

ときめくコケ図鑑

  • 田中美穂/文伊沢正名/写真
  • 山と渓谷社
  • 2014年2月

花は咲かないコケですが、本書によると見ごろの季節は春ではないか、とのこと。
写真が綺麗です。ときめきます。ルーペを使えば自分でもこんな風にみることができるのでしょうか。
補足写真やイラストが多いので、説明もわかりやすいです。コケの生活史や探し方などの基礎知識、図鑑ページ、「コケ」とよばれているけど実は別の生きもの。中学高校の生物の授業では通り過ぎるだけだったコケが魅力ある存在として伝わってきます。
山と渓谷社の『ときめく○○図鑑』、ほかにもいろいろ出版されています。未読でしたが、これを機会に手に取ってみたいと思います。「金魚」、「きのこ」、「薔薇」、「クラゲ」、「ラン」、「カエル」……。いろいろ楽しみです。

フジツボ-魅惑の足まねき-

フジツボ-魅惑の足まねき-

  • 倉谷うらら/著
  • 岩波書店
  • 2009年6月

フジツボは貝の仲間だと思っている人は多いと思います。私も本書を読むまで、フジツボが甲殻類、エビやカニの仲間だなんて思いもしませんでした。
殻の中には蔓状の脚が何本もある、と書かれているとグロテスクなようですが、写真を見るとむしろ繊細です。イラストも写真も見やすく、印象的なものが厳選されているようです。フジツボを「美しい、偉大だ」と言い切る著者の意気込みが伝わってきます。
分類、形態、進化、生態、幼生、などの生物学的なことだけでなく、都市伝説、ポエム、フジツボ学の歴史、味、収集加工まで。もう何年も海辺にいくことすらないのに、この一冊でフジツボが好きになってしまいそうです。