おすすめの本

あー失敗しちゃった

  • 掲載日:2019年11月15日

「あー、失敗しちゃった...どうしようっ」と思って、焦るのは人の常。失敗は好ましくもなく、嬉しくもないが、多くのことを学ぶきっかけでもあります。今回は様々な切り口で「失敗」を取り上げた本を紹介し、今後の頭や心の糧にしていただければと思います。

『絶望書店』

『絶望書店』

  • 頭木弘樹/編
  • 河出書房新社
  • 2019年1月

『絶望書店』という書名を見て、恐る恐る手に取ってパラパラめくり目にとまったのは、「失恋したときには失恋ソングが、絶望したときには絶望読書がいい…。」というあとがきです。確かに…。「夢をあきらめないで!」「頑張って!」という励ましの言葉よりも、落ち込んでいるときに心にしみるのは、となりで静かにそっと寄り添ってくれる友達の優しさ。まさに、『絶望書店』は今まで夢に向かってきたけれど、夢破れたときにそっと寄り添ってくれる本です。
夢は叶えるもの、あきらめるものではありません。夢をかなえるために頑張ります。だからこそ簡単にあきらめられないものです。十人十色の夢があってもその夢を実現させた人はそんなに多くはないでしょう。夢をあきらめるために努力した人の方が多いものです。『絶望書店』には九人の夢をあきらめた物語がつづられており、それぞれの物語は絶望という一言で語られるものではなく、一話一話に深くていい話が、そして生き様が浮かんできます。同時に、やさしく読者の心に寄り添ってくれます。
頑張っている人、輝いている人、その裏側には泣く泣く夢をあきらめた人の存在があります。この本と出会い、物事を正面からとらえるだけではなく、その裏側や側面までとらえることができるようになった?!

『本当に役に立つ「失敗学」』

『本当に役に立つ「失敗学」』

  • 畑村洋太郎/著
  • 株式会社 KADOKAWA
  • 2016年11月

「失敗は成功の基」といわれています。しかし、具体的にはどうすれば失敗から成功へと転換させればよいのかと説明することになると、簡単にはいかないことに気づきます。「原因究明」や「事例検証」だけでは十分な結果が得られるとは限らないからです。
著者は「失敗学」を提唱し、自らの研究成果を個人レベルで使えるように本書をまとめました。失敗後の回復過程の検証からはじめ、失敗原因の分析、情報の特性や伝達方法、誰にでもできる仮想演習の仕方、成熟した技術や組織が帰る問題など、「失敗学」の基礎と応用を簡潔に紹介しています。
とはいえ、この本は失敗を防ぐ、あるいは活用するための優れた論理を提供するのみではありません。失敗にかかわる人間の心理にも着目し、「なるほど」とうなずかせるところが多いです。うつ病にならないためのヒントや論理的思考の結果ではない創造性の本質を知るにはうってつけの一冊です。ビジネスパースンはもとより、日常的な問題の解決方法を探し求めている方にもお勧めします。
そっと鞄に忍ばせて、出勤や移動のお供にできる文庫サイズです。

『失敗の本質』

『失敗の本質』

  • 戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎/著
  • 中央公論新社
  • 1991年8月

74年前、1945年に終結したあの戦争は、国のありかたを根本的に変え、いまなお日本社会に決定的な影響を与え続けているといっても過言ではありません。これまで、様々な角度・視点から記された本が数多く出版されています。
この本は、なぜ負けたのか、という問いの本来の意味にこだわり、開戦したあとの「戦い方」「負け方」を対象としていることに特徴があります。
戦前の日本における近代的組織、すなわち合理的・階層的官僚制組織の最も代表的なものである日本軍には合理性・効率性となじまない特性があり、それが組織的欠陥となって失敗に導いたとみれば、日本軍に代表される日本的組織特性が、戦後の日本組織一般のなかに継承されて、現代社会の様々な問題の一因となっているという考え方もできます。
日本軍は、多くの場面で合理性と効率性に相反する行動を示しています。作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用することは、現代の様々な組織で働く人々にとって有益なことではないでしょうか。