おすすめの本

新しい旅のカタチ

  • 掲載日:2020年11月15日

いま、従来のパックツアーや観光地めぐりだけではない、新たな旅のスタイルが求められています。
“旅”とはただの移動ではなく、出会いや発見があり、心が動く非日常の時間を過ごすこと。だから日帰りでも、有名観光地にいかなくても、自分なりの旅の楽しみ方を見つけることができるはず。
今月は、多様な視点から旅をするための本を紹介します。

アンテナショップをめぐる旅-ふるさとの味と技!-

アンテナショップをめぐる旅-ふるさとの味と技!-

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  • キョーハンブックス
  • 2015年2月

東京にいながらにして全国の特産品を堪能できる場所、アンテナショップをご存知でしょうか。アンテナショップとは「地方自治体などが地域の特産品を首都圏に流通させるために作った窓口のようなもの」で、一歩足を踏み入れれば所狭しと並ぶ名産品に出迎えられます。また、イートインコーナーやレストランが併設されているところや、観光情報が得られるところ、ワークショップを開催しているところなど、都道府県ごとに様々です。
この本では全国のアンテナショップの情報を一挙にチェックできます。おすすめ産品や取り寄せ情報はもちろん、売れ筋商品、各地域の地野菜・伝統野菜とその選び方のコツなどが紹介されているのも嬉しいポイントです!
わたしが気になるのは高知のアンテナショップ「まるごと高知」。銀座駅からのアクセスもよく、併設されたレストランでは藁で焼く本格的なカツオのタタキも食べられるようです。
銀座・有楽町エリアに多く集まっているため、アンテナショップのはしごをするのも楽しいかも知れません。今こそ地方を応援する取り組みの1つとして、アンテナショップを訪れてみませんか?

東京の老舗を食べる-予算5000円以内!-

東京の老舗を食べる-予算5000円以内!-

  • 安原眞琴/文・写真 冨永祥子/画
  • 亜紀書房
  • 2015年6月

遠くへの旅行も、なんとなく気がひける。そんな方におすすめしたいのが、ちょっと遠めのお散歩くらいの旅。こんなときだからこそ、じっくりゆっくり都内の老舗の味を楽しむためにお出かけしてみませんか?この本には、それぞれのお店の、長い歴史があるからこそのエピソードが盛りだくさん。
例えば、身近な南千住のそば屋、砂場総本家。大阪城築城の際、そこで働く人々のために、資材置き場でそばが提供されたことが店名の由来ということは、知っている方も多いかもしれません。しかし、実は初代は隠密で、徳川家康の暗殺計画を察知して、未然に防いだことが古文書にのこされているとのこと。表向きはそば屋の店主、だがしかし、裏では隠密として大活躍、その初代の味を代々引き継いでいる…と知ってからいただくそばは、また味わい深いものになりますね。
その他にも、初代が江戸城への仕出しの際に、桜田門外の変に居合わせたという八重洲の懐石料理・嶋村、はじまりは鳥鍋の料亭だったという上野の洋食・黒船亭、初代は徳川家に仕える鷹匠だったという、親子丼でおなじみの人形町・玉ひで、などが紹介されています。
どの店にも、興味深い歴史があり、その分紹介されている料理もさらにおいしそうに見えます。せっかくなので、他のお客さんの少ない時間に行って、この本にはないエピソードをお店の方に聞きながら、老舗の味を味わいたいものです。

ダークツーリズム-悲しみの記憶を巡る旅-

ダークツーリズム-悲しみの記憶を巡る旅-

  • 井出明/著
  • 幻冬舎
  • 2018年7月

近年、海外を中心に注目を集めつつある、ダークツーリズム。それは「戦争や災害をはじめとする人類の悲しみの記憶を巡る旅」(p.20)と定義される。本書は、著者による国内外の旅行記を通して、ダークツーリズムの雰囲気と本質的価値を感じられる構成となっている。
一般的な旅のガイドブックではあまり紹介されないが、どんな地域にも災害、病気、戦争、公害などの影の側面は存在する。例えば、エコツーリズムの聖地といわれる西表島。手つかずの自然が残るこの島には、第二次大戦末期に強制移住させられた移住民の多くが、マラリアで死亡したという歴史がある。有名観光地である小樽には、明治時代、運河から遠くない場所に遊郭街が存在していたという。
放っておけば忘れ去られてしまう悲しみの記憶をたどり、その記憶を次代に承継していく手法として、ダークツーリズムは価値をもつ。観光名所や美食といった光の部分だけでなく、影の面からその地域を見ることで、見える景色は大きく変わってしまう。そこに立ち現れるのは、立体的で豊かな旅の経験だ。
各章の最後には旅のテクニックが記載されており、読者自身を新たな旅へといざなってくれる。