PICK UP EXHIBITIONS『幕末のドラマ 吉村昭が描く「桜田門外ノ変」』
「雪だ」
という声に、鉄之介は目を覚ました。
『桜田門外ノ変』(新潮社 1990)
吉村昭記念文学館の企画展を見学にいってきました。
今回は、長編歴史小説『桜田門外ノ変』です。
水戸藩浪士らによる大老・井伊直弼の暗殺。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描いた長編歴史小説です。
吉村昭『桜田門外ノ変 上 改版』(新潮文庫/2009年12月)
司書による紹介はこちら→ 私の好きな吉村昭作品『桜田門外ノ変』
企画展入口
当日の雪道を思わせる白い地に赤い題字が印象的な入口です。
「桜田門外之変図」
入ってすぐの壁にタペストリーが展示されていました。
襲撃者の一人、蓮田市五郎が描いた図をタペストリーにしたとのことですが、いままさに井伊直弼の首が落とされようとしています。
(蓮田市五郎画「桜田門外之変図」写真提供 茨城県立図書館(茨城県立歴史館保管))
展示室
自筆原稿やメモ、資料が3章に分けられて展示されています。
「第一章 二度の「しくじり」」、「第二章 関鉄之介をめぐって」、「第三章 安政七年三月三日 桜田門外の変」と、作品の成立過程が紹介されているのですが、吉村昭はすごい、と再認識しました。
執筆途中で「しくじり」に気づけば、二度も書きかけの原稿用紙を焼却炉に投げ入れる。
主人公・関の持病について医史学者を訪ね、通説とは違う糖尿病と特定する。
捕縛の真実を突き止めるために現地調査へ行き、資料の誤りを見つける。
事変当日の雪が止んだ時刻を知るために何年もかけ、連載が終わり、書籍化された後でも正確な時刻を元に修正を依頼する、等々...
小説への、史実へのこだわりに圧倒されました。
映画「桜田門外ノ変」
2010年に公開された映画「桜田門外ノ変」関連の資料も展示されています。
水戸藩開藩400年記念の映画としても話題になったそうです。
今回の関連イベントの上映会にも、定員を超えての応募がありました。
なお、荒川区立図書館では図書館向けの貸出許諾を得たDVDを所蔵していますので、興味がある方はどうぞご予約ください。
今回の企画展では、オールカラーの解説パンフレットが無料配布されています。
冊子巻末の、気象予報士・田家康氏による「安政七年三月三日の江戸での雪について」という解説も興味深く読みました。
関連展示・イベント
展示室には、図書館で貸出可能な資料も展示されており、田家氏の著書も置かれています。
1階に降りるとエントランスホールでも、特集展示として関連本が広く集められていました(11/20まで)。
また、吉村昭が書き出しに非常に苦労したエピソードにちなみ、「あなたの好きな一行目は?」と題した参加型イベントも行われています。
インフォメーション
- 会期
令和6年10月20日(日)~12月18日(水)
【休館日】11月21日(木)・12月6日(金) - 開館時間
9時~20時30分 - 会場
ゆいの森あらかわ3階企画展示室 - 観覧料
無料
企画展公式サイト
https://www.yoshimurabungakukan.city.arakawa.tokyo.jp/contents?pid=2251