映画公開記念 特集展示「雪の花―ともに在りて―展」
吉村昭の『雪の花』(昭和63年、新潮文庫)は、江戸時代末期、福井藩の町医者・笠原良策が未曾有の疫病である疱瘡(天然痘)から人々を救うため、私財を投げ打ち、困難を乗り越え、種痘(予防接種)の普及に尽力した姿を描いた作品です。
すでに、この小説を原作とした映画「雪の花―ともに在りて―」をご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、1月25日(土)から3月16日(日)まで、吉村昭記念文学館では映画公開記念の特集展示を開催しております。
司書による紹介はこちら→私の好きな吉村昭作品『雪の花』
企画展入口
痘苗を福井に運ぶために過酷な吹雪の中、山越えをする場面を思わせる印象的な入口です。
入ってすぐ左側の壁に、写真とともに笠原良策の人柄がわかる一文が書かれています。
展示室
「1吉村昭 医家を描くー笠原良策と「日本医家伝」ー」、「2「雪の花」刊行ー福井市立郷土歴史博物館での再調査ー」、「3歴史に埋もれた種痘術ー中川五郎治と川尻浦久蔵ー」の3章に分けられて展示されています。
1章・2章では吉村昭が良策について最初に描いた医学雑誌「CREATA」(日本メルク萬有株式会社)、連載を単行本化した『日本医家伝』(講談社)、良策を主人公として書き下ろした『めっちゃ医者 伝』(新潮少年文庫)、吉村が再調査し大幅な加筆修正を行い改題された文庫版『雪の花』(新潮社)の初版本及び自筆原稿「めっちゃ医者 伝」や自筆メモ、執筆時の参考文献が展示され、『雪の花』の成立過程がわかりやすく紹介されています。
3章では『雪の花』と同じく種痘を行った人物を描いた『北天の星』(講談社)『花渡る海』(中央公論社)の2作品、その主人公である中川五郎治や川尻浦久蔵を取り上げた『歴史の影絵』(文春文庫)などの初版本をはじめ、自筆原稿「北天の星」、自筆メモなど大変興味深い資料が展示されています。
自筆原稿『めっちゃ医者 伝』
展示室左奥では、映画「雪の花ーともに在りてー」の小泉堯史監督より寄贈の台本をはじめ、実際に撮影で着用した衣装、小道具、スチール、衣装デザイン画のほか、黒澤明監督作品「赤ひげ」の小道具で、本作にも使用された薬研も展示されています。小道具は、映像では映らない細部までしっかり再現されており見どころ満載です。
関連展示・イベント
2月2日(日)にゆいの森ホールで開催した、映画公開記念トークイベント『小泉堯史監督が語る 吉村昭と「雪の花ーともに在りてー」の様子を、Youtube荒川区公式チャンネルで公開しております。(動画の公開は3月16日まで)
動画はこちらから
インフォメーション
- 会期
令和7年1月25日(土)~3月16日(日)
【休館日】2月7日(金)・2月20日(木) - 開館時間
9時~20時30分 - 会場
ゆいの森あらかわ3階企画展示室 - 観覧料
無料
企画展公式サイト
https://www.yoshimurabungakukan.city.arakawa.tokyo.jp/contents?pid=2373