おすすめの本

壁をなくしていく。新しい世界に触れる。(4月)

  • 掲載日:2022年4月15日

「障がい」をテーマに3冊の本をご紹介します。パラアスリートや義足のモデルの活動を広める写真家。
障がいを負っても人生をポジティブに楽しみ、自ら発信する女性。手で触って学ぶ、新しい教育のかたち。
変化しつつある近年の「障がい」の状況を教えるとともに、社会の見え方を変えてくれる本たちです。
 

チェンジ!~パラアスリートを撮り続けて、ぼくの人生は変わった~

  • 越智貴雄/著
  • くもん出版
  • 2020年6月

ページをめくると目に飛び込んでくるのが、「かっこいいパラアスリートたち」の見出し。義足やアイマスクを付けて競技に挑む選手たちの写真は生命力にあふれ、息をのむ美しさです。この写真を撮ったのは、障がいを持つスポーツ選手や、義足のファッションモデルを撮り続ける越智貴雄(おちたかお)さん。
障がいに対する間違った意識が人の中に「壁」を作るという越智さんは、つらい状況にも負けずにひたむきに進むパラアスリート達や、義足を堂々と見せることで自分を表現する女性たちをカッコ良く、魅力的に撮り、発信することで社会に変化を与えようとしています。そのためのこだわりも相当なもので、選手が乗り越えてきた苦難の数々や、障がいが引き起こす問題を緩和するための工夫と努力といった背景を理解した上で、一番魅力的に写るアングルや表情を切り取ろうとするのです。
近年になって、障がいを持ちながら活躍する人々にスポットライトが当たることが増えました。その活動を支え、応援する人たちの姿に爽やかな感動が生まれます。
 

普通で最高でハッピーなわたし-特別でもなんでもない二度目の人生-

  • 渋谷真子/著
  • 扶桑社
  • 2020年11月

「田舎に住んでいるけどめっちゃギャル。それがわたしのアイデンティティ。」と自らを表現する渋谷真子さんは、山形県育ち。将来も故郷で暮らすことを選択し、家業である茅葺(かやぶ)き職人を継ごうとしていました。2018年仕事中に家の屋根から落下し、脊髄損傷(せきずいそんしょう)による障がいを負います。屋根から落ちた衝撃の後、真子さんがまず行ったのは自撮り。事故の体験を記録と記憶に留めながら、同時にその後のことを考え始めます。変わってしまった身体で新しい人生を歩むため、情報を集めること、人に聞き・頼ること、また自分でも発信することを実行していきます。起こってしまったことを悔やむより、拓かれた未来へと進む気持ちの強い彼女。ファッションやメイクで人生を楽しむことも忘れません。自分のために、そして同じ境遇にある人の希望となるように……という願いを込めて、様々な体験をYouTubeやSNSで発信する活動を続けています。
「わたしはもともと、経験を重ねていくことで自分の人生が豊かになるべきだと思っている。だって嫌じゃん。いろんな経験をしているのに、若いとき・過去のほうが充実していたっていうのは、人生損してない?」「下半身麻痺になったことでわたしの世界はより広がった。」常にポジティブな考え方で、どんな状況でも未来に可能性を見出していく姿に、誰もがきっと力をもらえます。

手で見るいのち

  • 柳楽未来/著

  • 岩波書店
  • 2019年2月

盲学校の視覚障害の子供たちには、理科の中の生物の実験や観察は、顕微鏡を使った観察が多くあり、大きな壁となっていました。
ある動物の骨を触る生徒たちを見て何かすごい感じ、ただすごいで終わらせてはいけない生物の楽しさを子どもたちに伝えたいという思いから教師たちが授業をつくり今に引き継がれています。
手で骨を触って観察し、驚くような発見を繰り返し、動物たちが生きていたときの姿を自らの手の感触を通して学んでいます。じっくりと手で見て作り上げた命の像は、私がこれまでに視覚で得てきたものと同じなのか、それとも違うのか?
視覚に頼っているだけでは決して気付かないことそれは現代の視覚優位社会を生きる私に大切なことを教えてくれる一冊です。