ぺら
声で掴んだ居場所
- 掲載日:2020年3月1日
2020年03月01日★vol.303
『ゴースト』
- ジェイソン・レノルズ/作
- 小峰書店
- 2019年
小学生のあの日、酔った父親に向けられた銃口から逃げるために走った。そのときからゴーストは自分の足が速いことを知っている。
父親は刑務所にいったし、自分は中学生になった。今は母親と二人暮らしだけど、毎日何かに怯(おび)えながら生きていた。
陸上競技に出会って、仲間ができ、努力を覚えた。毎日が変わりそうに思えても、挫折や過ちが追いかけてくる。
そんなとき陸上チームの監督がゴーストに放ったセリフが痺(しび)れる。
「自分という人間からは逃れられない。だが、なりたい自分に向かって走っていくことはできる。そういうことだ」 (ねぎ@町屋)
『どうかこの声が、あなたに届きますように』
- 浅葉なつ/著
- 文春文庫
- 2019年
ある事件で心と体に傷を負った小松奈々子は、地下アイドルをやめ、マスクが手放せなくなっていた。そんな中、ラジオ番組のアシスタントにスカウトされ《小松夏海》として飛び込んだラジオの世界。夏海は日々を懸命に生きるリスナーを「生きているだけでえらい!」と褒めて寄り添うことで、自身が失ったものも取り戻していく。
最近はYouTubeやTikTokなどでの動画配信が人気だけれど、「声」だけを武器に人を楽しませ、好かれるってとても大変なこと。ページをめくるたび、成長していく小気味よい夏海のトークが、臨場感を持って聴こえてくる気がします。ラジオ局舞台裏の奮闘も、見逃せません!!
(23A@町屋)