おすすめの本

Radioでgo!(6月)

  • 掲載日:2025年6月15日

 1925年に日本でのラジオ放送が発信され、今年で100周年!災害時の必須アイテムとしてはもちろん、複数のタスクを同時に行いたい現代人にとって、とてもマッチしているメディアではないでしょうか。
 聴取手段も増え、エリアや時間の制約も乗り越えました。まだまだ多くの可能性を秘めている、ラジオがテーマの本を紹介します。

絶体絶命ラジオスター

絶体絶命ラジオスター

  • 志賀晃/著
  • 毎日新聞出版
  • 2021年2月

 AMラジオ局でパーソナリティをつとめる垣島。ラジオの仕事は順調のようで、多くのリスナーからの支持を得ている。ところが最近、「自分にそっくりの自分」が自分の周囲に現れ、徐々に生活を侵食される。挙句、自身の番組まで乗っ取られる始末。怒り心頭の垣島が局の副調整室の扉に手をかけた時、物語のスケールが飛躍する。
 前半部分のちょっとした箇所が伏線となっていて、後半に次々と回収されていく展開がおもしろい。イッキ読みした後、すぐに読み返して伏線の妙を味わいたくなる。ラジオ製作側の空気感を垣間見ることができるので、ラジオリスナーにはぜひ一読いただきたい作品。

声を上げる、声を届ける-ラジオ報道の現場から-

koeage

  • 澤田大樹/著
  • 亜紀書房
  • 2021年12月

 本作は、右も左もわからない新米ラジオ記者が、試行錯誤を繰り返しながら現在に至る経緯や、取材から学んだことが書かれている。いわばラジオ記者としての進化の過程の記録でもある。
 ラジオの長所はテレビと比較するとわかりやすい。強烈な映像とフレーズによって視聴者にインパクトを与えることがテレビの特徴とすると、ラジオはそこからこぼれ落ちる小さなニュースや人々の声を拾い上げ伝えることができるメディアであること。またテレビはその時々の旬の話題を取り上げるのに対し、ラジオは一つの問題を深く掘り下げ、継続して追っていけるメディアであること。それがラジオ報道の強みであると著者は言う。
 ラジオを衰退していく弱小メディアと思っている人に是非読んでもらいたい。

想像ラジオ

souzouradio

  • いとうせいこう/著
  • 河出書房新社
  • 2013年3月

 タイトルにラジオとあるが、実際のラジオは出てこない。登場するのは想像という電波を使ったラジオ。
 本作の語り手は、ふたり。大事な人を残したまま東日本大震災でこの世を去った想像ラジオのDJであるアークと、大事な人を亡くしこの世に取り残された作家のS。
 Sの大事な人が亡くなった事実を受け入れられない時間、アークが自分の状況が受け入れられず、この世の近くを彷徨っている時間。その時間の大切さについてSがいう。
 「死者と共にこの国を作り直して行くしかないに、まるで何もなかったように事態に蓋をしていく僕らはなんなんだ。」と。過去の災害や事故を早々と忘却の彼方に追いやる我々に対する著者の憤りのように聞こえる。3月が来るたびに読みたくなる一冊である。