おすすめの本

電車に乗って(10月)

  • 掲載日:2023年10月15日

通学、通勤や旅行の移動手段として、私達の日常には欠かすことのできない乗り物である電車。
当たり前のように利用していますが、安心で快適な移動の裏側には様々なドラマやデザインの工夫があったり…。
電車に揺られている間に物語を感じたり車内や風景を観察してみると、思いがけぬ素敵な出会いがあるかもしれません。
そんな出会いのきっかけになる、電車にまつわる本を集めてみました。

駅ナカ、駅マエ、駅チカ温泉

  • 鈴木弘毅/著
  • 交通新聞社(交通新聞社新書)
  • 2017年6月

 鉄道と温泉を同時に楽しめる本です。旅に精通した著者が、北海道から九州までの駅から5分以内で行ける温泉を利便性、泉質、料金などを考慮して選んだ57の施設が紹介されています。
 駅チカ温泉なら思い立ったら、その日にひとりでも気軽に行けるところが実に魅力的です。著者曰く「行きやすい」より「帰りやすい」方が温泉施設として大きな魅力があると。温泉に浸かってゆっくりくつろいだ後にバスに乗って駅に向かうのは誰しも億劫に感じるものです。その点、駅チカ温泉なら時間いっぱいまで、温泉を満喫することができます。
 コロナ禍前に出版された本なので、おでかけの際は定休日、営業時間をご確認ください。

第一阿房列車

  • 内田百閒/著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2003年5月

 阿房列車とは、用事や目的のない旅の行程を著者が名付けたものです。
 著者の旅は独特です。名所旧跡には行きません。切符を前もって買う事はありません。しかし、席が満員で乗車できないことは苦々しく思います。席は一等が好きで借金してまでも一等に乗りますが、帰りは三等でも構いません。どっちつかずの二等には乗りたくない。わがままで頑固ですが、ひとり旅は苦手で、何を話しかけても「はあ」と返す国鉄勤務の男性が旅のお供をします。
 このシリーズ、今なお人気が絶えないのは、効率とかコストとか他人の評価とか一切関係ない、大真面目で愉快な百閒さんの魅力が色褪せないことが要因でしょうか。

水戸岡鋭治デザイン&イラスト図鑑

  • 水戸岡鋭治/著
  • 玄光社
  • 2023年5月

 九州新幹線「つばめ」「かもめ」や日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」など、数々の名列車を生み出してきたデザイナー・水戸岡鋭治氏をご存知だろうか。そのユニークなデザインは、自然や和、地産地消的考えをも取り込んでおり、乗客は斬新できめ細やかな空間に圧倒され、非常に贅沢な鉄道体験へと誘われる。
 この本は、そんな水戸岡鋭治氏の60年分のイラストやデザイン作品を収載する集大成的な図鑑である。彼の鉄道デザインの原点や仕事へのゆるぎない姿勢に触れることにより、ものづくりに本当に必要なものとは何かを考えさせられることだろう。
 鉄道ファン、デザイン好きはもちろん、読む人全てを魅了する一冊。