おすすめの本

ひとを知る

  • 掲載日:2020年4月15日

「近ごろ話題のあの人、どうも好きになれない」などと思っていたはずなのに、いったんその人となりを知れば好きになってしまう。そんな経験をしたことはありませんか?
あなたの知っているあの人、あなたの知らないあの人のこと、ちょっとのぞいてみませんか。

屈折くん

屈折くん

  • 和嶋慎治/著
  • シンコーミュージック
  • 2017年3月

1980年代終盤、バンドブームの波に乗り一躍脚光を浴びながら、ブームの終焉とともに苦難のときが始まった。そんなバンドがどれだけあっただろうか。本書はまさにそんな時代の波に翻弄され、後に不遇のときを味わうことになるバンド「人間椅子」のギター兼ヴォーカル、和嶋慎治氏の自伝である。
幼少期から器用には生きられず、もがいてばかりの著者が、音楽活動だけで生計を立てることができるようになるまでをたどる。
和嶋氏は読書家であり、大型書店で和嶋氏が選書した本のフェアが開催されている。また、作品中の詞の多くを手掛けてきたこともあり、文章にはぐっと引き込む力がある。
あえて苦労を背負いこみ苦悩しながら生きてきた著者のすがたに、もどかしさを感じながら読み進めた先で「さて、私はどう生きたいのだろう?」と自分自身に問うてみては?

感染症とたたかった科学者たち -情熱とひらめきが命を救った!-

感染症とたたかった科学者たち -情熱とひらめきが命を救った!-

  • 岡田晴恵/著
  • 岩崎書店
  • 2013年11月

新型コロナウイルスの感染が拡大をしている現在(2020年4月)、感染症との戦いの歴史を振り返り、そこに学ぶことが重要ではないかと感じています。
今回取り上げる本は児童向けの本として作られているため、わかりやすさも備えながらボリュームもあり非常に充実した内容になっています。
ジェンナー、パスツール、コッホや北里柴三郎など感染症の研究で大きな功績のあった人物たちが当時のエピソードとともに紹介されています。これらの人物の人となりがわかり、急に身近に感じることができます。
さらに、人物についてだけではなく感染症(伝染病)によって歴史が動いたり、ひとつの時代や文明が終わったりする様子なども把握できるようになっていて、世界の歴史を学ぶ上での副読本としても大変素晴らしい内容です。自分が世界史を履修していた高校生の時にこの本を読みたかった…!という思いに駆られます。
苦しみながらも感染症への対抗手段を見つけてきた人間の英知に(今は特に)本当に勇気づけられる思いです。

枕草子のたくらみ -「春はあけぼの」に秘められた思い-

枕草子のたくらみ -「春はあけぼの」に秘められた思い-

  • 山本淳子/著
  • 朝日新聞出版
  • 2017年4月

一条天皇の御代、その寵愛を一身に受け、宮中で絶対的な存在感を示した中宮定子。女房として定子に仕えた清少納言が著した「枕草子」には、聡明で明朗快活、流行の最先端を行き有力な後見を持つ、眩いばかりの定子の姿が描かれる。
翻って史実をたどるに、少なからず異なる姿も見えてくる。順風満帆に思えた定子の人生は、後見であった父の死によりかげりが見え始め、24歳で世を去るまでかつての輝きを取り戻すことはなかった。
しかし、定子が亡くなるまで仕え続けた清少納言は「枕草子」を執筆するにあたり、定子や自身の悲しみやくじけそうな心を笑いと雅びによって覆い隠した。「枕草子」にしかけられた清少納言のたくらみは今なお機能し続け、わたしたちは理想の定子像に魅せられている。