おすすめの本
人にやさしく
- 掲載日:2020年6月15日
ここ数年、日本は困難な災害に見舞われてきました。その状況の中では心ない行動をニュースにて目にすることもありますが、反面、寄付やボランティアなど、支え合い助け合う、気持ちの良い話も多く聞きます。
今月のおすすめ本コーナーでは、「道徳心」のルーツを辿る本を紹介します。
完訳 論語
- 井波律子/訳
- 岩波書店
- 2016年6月
今から約2500年前より長い長い間この書物は大切に読み継がれてきました。中国の孔子という学者の言行録を弟子達が書き残したものです。今で言う名言集みたいなものですね。どこからでも読めますし気の向いたときに1文ずつ読むこともできます。大変手に取りやすい本です。
江戸時代には教育に広く用いられました。寺子屋で幼い子ども達が声を出して読んでいる、そんな場面をドラマでも見ますね。意味が分からずともその不思議な言葉のリズムを歌うようにして暗記していたようです。口語訳を声に出してみるのもよいかもしれません。
私がビックリしたのは『温故知新』。新しい発想や挑戦は古き伝統を勉強してからと、紀元前500年でも!?言っていたなんて!謙虚な姿勢、思いやりが大切だと孔子は言っています。何千年経ちどんなに文明が発達しようとも、人の心は変わらないのですね。論語を読むと、とてもそれを感じます。あなたも心に響く言葉を探してみては?
武士道
- 新渡戸稲造/著
- 岩波書店
- 2007年4月
強い格闘や剣術のようなイメージで使われがちな武士道という言葉ですが本当はそうではありません。仁愛と、礼儀と、恥の心。それを含んだ日本独自の道徳心のことで、武士階級以外にも全ての家庭に浸透していきました。
明治時代、それを世界に紹介して大ベストセラーになったのがこちらの本です。
例えば、日本人は自慢の家族を「愚息」や「愚妻」と表現したり、心を込めた贈り物をする際に「つまらないものですが」と言います。これに対しアメリカ人は「素敵な貴方にはこの素晴らしいプレゼントを」と表現します。
日本人って何だかおかしいのかも!?と思える沢山の外国との違いをユーモラスに新渡戸さんが話してくれます。そんな日本人が私は好きです。
ある明治人の記録
- 石光真人/編
- 中央公論新社
- 2017年12月
北清事変の英雄として知られる明治時代の陸軍大将柴五郎。的確な指揮と避難民への人道的な救助により、世界各国で称賛され勲章を多く授与された人物ですが、亡くなる際に遺書として書き残したものを編者の意思によりそのまま書籍化されたものがこの「ある明治人の記録」です。
学者や出版社が書いた歴史コーナーに並ぶ本とは一味違う、「その時代を生きた人の生の声」をそのまま聞くことができます。
どんなに辛く悲しく恵まれない環境に陥ろうとも、一生懸命に生きることの大切さを痛感する1冊です。